きみが架空の主人公
しもつき七



インベーダーゲームみたい。bang、それからshoot、戦うことしかでき
ないので自滅の最終章。これはきっと運命なのって、ブロックひとつ
壊して、はねかえるビームにやられた。コンティニュー。画面に身を
投げた私の、羽根はこうして折れちゃったけど、まだ足があるよ平気。

血塗れのからだを新しい色のドットが洗っていく


はじまっちゃったら終わりにむかう、永遠なんかないし孤独はきみだ
けのものじゃない、とかいう人類の前提はどうでもいいはずなんだけ
ど、メールの返信こないとか、あした学校いきたくないとか、そうい
うのに内包されたタイプの憂鬱にはけっこう毎日やられてる。


あとふたつ。


戦うきみの目は虚ろ、息も絶え絶えで、対峙する敵にあわせて百個く
らいあるモードの、だいじなひとつがみつからない。どうしよう、怪
獣はすぐそこ。火を吹きながらこの街を破壊しにやって来たのに!
きみはいたって冷静に叫ぶ。世界を救えるのは私しかいないの。

そんなことないのに。っていうかいつからロールプレイング?


セーブできないし、記憶にものこらない、キャラクターじゃないし、
文字でも記号でもない。自己紹介です。だから、空がどんどん光っぽ
くなっていって、起き上がった朝のかけがえなさに、ほんとはちょっ
と感動したりもするんだけど、いわない。だって、普通の女の子。


あとひとつ。


残機を知らせる点滅が、きみのいのち、そして、私の祈り。
そういう減らず口をいつまでもたたきたい、たくさん誤解をして、そ
れでも未来に笑いあうため、間違いつづけたいね。あ、敵だ。bang、
それからshoot。ゲームオーバー。汗ばむ手の中にコインはもうない。


太陽と夕日って、べつものだと思っていた。過去と未来がほんとうに
地続きならやっぱりみんなどこにもいけないのかもしれない。肉色の
カラーコードが示す私たちの中身。みんな同じだ。皆。



自由詩 きみが架空の主人公 Copyright しもつき七 2012-08-26 22:17:23
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