たかさごゆり
小池房枝

テッポウユリではないのです
今頃の季節
花期をたがえて咲く白い花

例えばアカザやブタクサ
夏草でいっぱいの四角い空き地の真ん中に
丈高く唐突にすくっと一本だけ

細葉の形と付き方が
テッポウユリのそれとは違いますでしょう?

筒長く純白で清楚な花も
つぼみによっては
臙脂を帯びていますでしょう?

他のどんなユリより華奢な茎のくせして
ひどく真っ直ぐに立ち上がって咲く

ユリゆえか贔屓され
間引かれないのをいいことに
つつじの植え込みや
グランドカバーの草花や
ひとんちの芝生にまで入り込んでる

定年退職後の町内会長をしてさえ
「この百合は、飛ぶんだ」
と、詩人たらしめるほど
尊称としての雑草に値する雑草

彼らを
彼女らを
テッポウユリと呼んで欲しくないのです
テッポウユリではないのですから

あれはタカサゴユリで
どこからか飛んで来たユリなのだと
やがてまた去っていってしまうユリたちなのだと
知っていて欲しい
招いたからといって
生えて来てくれるようなユリではないことも

タカサゴユリ
わたしなら君の名前を呼ぶのに


自由詩 たかさごゆり Copyright 小池房枝 2012-08-21 22:50:36
notebook Home 戻る  過去 未来