八月は歌の葉月 人と人外の巻
小池房枝

五月蝿さばえなす少女らは街を飛び回り制服だけが九月を待ってる
 
椅子の名はサヤカとソヨコ 練馬区の下赤塚にて少年の部屋

アルジャーノン、ネズミの名前は覚えてる。青年の名は忘れてしまった
 
ポンと蹴られニャンと鳴くなら猫だろう囀りたいなら歌わせてやる
 
プリズムのヘキサグラムの残像は緑 刑事は家路につきぬ
 

満天の初見の宇宙そらにも迷わない 無知と未知とを受け止めて立つ

無人売店「ヤサイ良心販売所」売ってしまっていいのかほんとに
 
空にまた覚束なげな若ツバメついつい両手をさしのべてしまう

ねぇピート夏への扉が欲しいなら何処でもドアでここへおいでよ

空も星も可哀想なんて、ああなんて、なんて大きなお世話なんだろ


ラプンツェル窓ではなくてドアの鍵をあげるよ自分で歩いておゆき

まっくら森シュバルツバルトの梢遥か高みにも星の空があるだろう

夏は部屋に水を張りたい足元に波音ジャブジャブさせて歩くよ

奈良の夏つぶらな瞳の猛獣のシカ煎餅への意志衰えず
 
初物の梨スズムシとコオロギも喜び勇んで皮をしょりしょり


一生に足る恋はもうしたのかな したけど鳴いているのかなセミ

大騒ぎされてたハエトリグモ一匹 手に受け止めてオフィスの外に

鉄道の廃材造りの飲み屋にて見つけた枕木 耳当ててみた
 
寝そべってヒトとおんなじかっこしてあんたも一冊貸したら読むにゃ?

ワンコinドリンクセールの自販機のかげでは小犬がお昼寝中です


短歌 八月は歌の葉月 人と人外の巻 Copyright 小池房枝 2012-08-20 19:48:29
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