ミミズ千匹
鯉
いつかプロトコルを委譲する伝達飼育員が
アバラをひっくり返して心臓を剥き出す
なみなみと湛えられた
骨はつぶれて
内臓も空っぽで
血管と皮だけが残った
血はなくてもあっても血だった
かたどられてさえいれば
それは血だった
通信やがて
エニグマよりヴォイニッチ
ラブレターさえも
ケーブルを突き刺した手紙同士がひそひそ話を始める
破瓜症に直結する
時系列を犯す穴倉のよどみ
ざわめき声の蛇
ぎらついた悲鳴がビュンビュン飛び回る
整理券を売りさばくには時間がかかり
男の子は指を吸う
ピアノだって弾けた、ギターだって
あの子の唇だって触れる
赤信号を飲み干す、巨大な黒い太陽
モールス信号みたいな生死
マッチのきらめきよりも泣き叫んだ
雑踏が伝令される
剥落した皮膚の傍に手向けられた
男の子の幾千の指が行進する
けむり、血まみれ、空の肌色
手紙でできた飛行船が墜落する
爪に生えたひとしずくが転がる