僕が君を一匹のみすぼらしい蛾に譬えたなら
ただのみきや

 垂直な光のピンで留められて
 横たわる朝は散乱した昨夜の屍だった
 まだ誰もいないスーパーの駐車場で
 ぬるい風が砂埃を吹き上げている
 
 一匹の小さな蛾が
 逆らいながら飛んで行く
 よろけながら小さな翅を震えさせては
 惜しむこともなくいのちを削って行く
 
 僕が君を一匹のみすぼらしい蛾に譬えたなら
 君は怒るだろうか
 うす汚い嫌われ者の虫けらに

 たった一人 砂漠を渡る旅人のよう
 白昼に引き出され さらし者にされても
 真っ直ぐに顔を上げ続ける反骨者のよう

 君こそが
 僕の心の錆びついた鐘を響き渡らせた
 透明な鉄槌
 僕を闇の向こう側へと駆り立てる
 真夜中の遠吠え
 
 


自由詩 僕が君を一匹のみすぼらしい蛾に譬えたなら Copyright ただのみきや 2012-08-09 23:43:20
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