丘の魚
はるな
あかぐろい肌をして
山盛りの雲をあおぐ
雨を待つわずかの間に
なんども恋におちる
季節はぎしぎし言う
発情のおわらない猫が
前足で引き留めている
濃緑が
少女を溶かしてしまった
覚えていることは
そんなに多くない
あなたが街を背に立つと
たっぷりとした風が通る
長い手あしで泳ぐように進む
そのときにわたしは
魚を愛するようになった
あの看板のまえで結んだ指さきを
いくらさがしてみても
欠片も落ちていない
丘の魚は
こうもかんたんに死にますか
雨をまつ間にも
なんども落ちたというのに