丘の魚
はるな


あかぐろい肌をして
山盛りの雲をあおぐ
雨を待つわずかの間に
なんども恋におちる

季節はぎしぎし言う
発情のおわらない猫が
前足で引き留めている
濃緑が
少女を溶かしてしまった

覚えていることは
そんなに多くない

あなたが街を背に立つと
たっぷりとした風が通る

長い手あしで泳ぐように進む
そのときにわたしは
魚を愛するようになった
あの看板のまえで結んだ指さきを
いくらさがしてみても
欠片も落ちていない
丘の魚は
こうもかんたんに死にますか
雨をまつ間にも
なんども落ちたというのに


自由詩 丘の魚 Copyright はるな 2012-08-04 12:11:27
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