風を浴びて暮らそうよ
小池房枝

風を浴びて暮らそうよ
室外機の熱風ではなくてさ

木々が日差しをさえぎって
しっとりと冷ややかな土が冷ました風
暗渠ではない川の水面を
きらきらと輝かせながら吹いてきた風

蓄熱するアスファルトで地面を覆い
冷めないコンクリートで住処を作り
電気とガスでがんがんクーラーを焚いて
涼しい側だけで暮らそうたって無理だよ

北半球の熱波と南半球の寒波
ラ・ニーニャとエル・ニーニョ
高気圧も
高気団も
特別暑いこの夏も
地球が温暖化してようとしてまいと
今はまだ
涼しい風の中で暮らそうよ

雨のしみこむアスファルトや
息をするコンクリート
何より木々
地面
せめて打ち水
大いなる日陰、夜

反射鏡式オーブンの
その焦点にいるような都会の炎天は
本当はただの晴天  
レイリーブルーの青空


自由詩 風を浴びて暮らそうよ Copyright 小池房枝 2012-08-01 22:30:55
notebook Home 戻る  過去 未来