エア・ポケット
梅昆布茶

ポエケットではなくエアポケット
チケットのない旅を君と

母が亡くなって最期は点滴でも間に合わない
栄養失調のまま昏睡状態で逝った

体格のいい人で骨壷に入りきらずに
納骨の係りの方に
あまり気にせずにつぶしてもらって
やっとおさまった 笑っていたが

僕もおむつを替えたがすでに女ではなく母でもなく
子供でもない骨と皮の存在の原型のような気がした

焼いてみると骨格は高度なバイオフィードバックの
いれもののような気もしてくる
ピアノを弾いて
スケートの選手で
恋もしたらしい

マザコンを自認する僕がすでにげんじつにはうしなわれた母を
詩で解消できたのか涙はでなかった

ただ母は去るもののかたちでぼくに
彼女としての最後の威厳をみせたのかもしれない

僕は子供を育てる
母のベッドの部屋がたぶん子供部屋

僕は働いてちょっぴり詩みたいなものを書いたり
好きな音楽をやったり
もう恋は無理と言いながら
あと15年をいきるのだろうな
下手な詩を迷惑をかけながら
読んでもらう甘えん坊のままで

でも母はきちんと死のかたちを示してくれた
僕もきちんと死のうと思う

やり残したこととか
人生で一回ぐらいはもてたとか
つまらないことをいっぱいつぶやきながら
逝きたいのだが

娘たちのしらけた顔が眼に浮かんだりして
自称の詩人もめいわくだけれど
うざいだるい意味不明の同居人で

それもまあいいかなと思っている






自由詩 エア・ポケット Copyright 梅昆布茶 2012-07-30 19:01:18
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