十一月の位置に
小池房枝

虹も蛇小雪しょうせつ以降は冬篭もり

開かれず流れず閉塞する天地

あるならば旋毛見せてよカタツムリ

無理じゃないそれはリムだよ端っこだ

カマイタチ北風小さなカタツムリ

今日よりも後は名のれよ冬薔薇

今日よりはどのポイントも寒施行

何もかも置き去りにしてオキザリス

何もかも置き去りにされてオキザリス

霜月に今夏実生の夕化粧

どっどどどう月影まっすぐ電柱に


ギンナンも葉も降らば降れ銀杏並木

桜の葉かさこそくすぐるアスファルト

オイヌノフグリ青いねまだ十一月だよ

シーラスのコーラス重なる秋の空

宮家専用ホームにドングリ敷きつめた

木枯らしを聞く夏の花の種の夢

シジュウカラ メジロ 今のはどちらのチチチ

おじさんは腰をいためた菊も飛べ

早朝の木枯らしにりんと白き月

シザーハンズきみが降らせる紙の雪これは

スノウフレークコーンフレークペーパーフレーク


珪藻の valve face のシルエット

滄海の一粟秋水河豚戴天
 
オリオンの首の小さな三角形

青信号シリウス遠くへ招いてる

天蓋はゲレンデ流星直滑降

彗星は空の幽霊 半透明

フローレス冬空でこそのインクルージョン

星はすばる千数百年前も今も

人影のまばらな海に桜貝

のど飴を分け合う季節になりました

咲いていたはず咲いているはずの薔薇

 
息継ぎに一瞬の虹イルカジャンプ

ウミガメの胸は広いな分厚いな

クリスマスツリーの電気元気ウナギ

イルカジャンプ弓なりの背を陽が走る

炉開きもせず日々焚き火そんな日々

霜月の立礼華麗に走りつつ

どんぐりの一粒つむじを狙ってた

この茸、赤いんですけど・・・。茶菓ですか?

傘の裏 菌糸輝く萬草庵

熱々のみかんの缶詰おいしそう

データベースチェック「矛盾はありません」


目を覚ませ耳を澄ませ我はSETIの一基

チョコみたいMとかベイビーユニバースとか

射手、オリオン、ペルセウスの腕、みな豪腕

落ちドングリ最多記録の秋台風

まぶしくはなくただただ明るく彼岸此岸

ざっくりと割れたざくろの季節です

とろとろの熟柿を小鳥が啄ばみます

さざんかは散りたい放題散っています

ウサギ座は今年も狩られかけたまま

現代詩読んだだろうか長門悠希

コスモスが可憐なふりして揺れている


売られても買うな喧嘩はその場では

あまりにも思い切ったことしてくれる

「タフでなければ」ってタフだろうヴェロキラプトルは

ひとでなしあやかしではなくろくでなし
 
たんぽぽの湯たんぽ地球を温めて

SFを読まない人が多すぎる

たりらりらん、足りない learn だったとは!

海鳴りは空耳、耳鳴り、貝の殻

風ひとつポプラ全ての葉が揺れる

カラス座が南十字を指し示す

夜の果てひむがしの空に地球照


曙は上げ潮 月の船もやう

曙の上げ潮 春から星をさらう

サソリお前 お日様と一緒に上がって来

夕日梳く雲の指を梳く空の風

いたずらな風に落ち葉をくらわされた

来月は冬至 落ちきる砂時計
 
山に山 紅葉に紅葉の夕日影

青い花は竜胆枯れた茎もまた

稜線の日時計を誰が読むだろう

窓の風ガタピシ出たがる猫のよう

風も猫も入りたければニャーと鳴け


温かい風が夜空をかけあがる

予兆など見せずに寒気が来るのだろう

土に還る落ちた花梨の香りいつまで

ねずみ一匹 大山無鳴動大地震サイレント アースクェイク

キャットフィッシュ スロースリップ クイックターン

列島は島弧 環大洋の花綵

サルビアの蜜の甘さがまだ夏だ

冬水仙アサツキのような浅緑

ツワブキの蕾でっかいタンポポだ

銀木犀咲いていたのかいないのか

白い十字はやっぱり柊だった間違えた 


俳句 十一月の位置に Copyright 小池房枝 2012-07-29 18:10:29縦
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