かくれんぼ
亜樹

首を吊るには低すぎる木の下で
少女は一人
空を睨んでいた。
役場から聞こえるサイレンが
夕焼け色ににじんで消える頃
やかましかったセミももういない。

――もういいかい

アジサイの上
小さな雨蛙が
夕立を呼んでいる

――もういいよ

昼間のうちに刈られた草が
陽光にあぶられて
もうすでに発酵した
鼻につく、その匂い

首を吊るには低すぎる木の下で
膝小僧に擦り傷をこさえて
少女は睨んでいる

明日がやってくるほうを


自由詩 かくれんぼ Copyright 亜樹 2012-07-17 23:45:30
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