不吉な月がのぼる
梅昆布茶


60年代末のベトナムのジャングルで
月を見上げながらたばこをふかす高校でたての若い兵士

シンプルでストレートでノリのいい曲の背景に
時代の絶望をぶらさげてラジオから流れていたCCR

今夜は外にでちゃあいけない
そう命さえとられかねない
不吉な月がのぼってくるんだもの

時代や世界がじぶんに何を要請しているのか
その要求に応えるべきなのか
それとも霧の5次元へエスケイプを決め込むのか
バイトに追われながら漠然とかんがえていた

逃げ場のない袋小路で選択を迫られるのが嫌で
知らないふりをしていたのかもしれない
おびえた鼠のようにね

ギャンブラーにさえなれないじぶんを的にして
酒場の隅で質量のない手玉をキューで突く

あのとき音をたててポケットに落ちたものは不吉な月でもなく
あの頃やぶれた恋でもなく

うわついた生き方に辟易していた僕自身だったのかも知れない






自由詩 不吉な月がのぼる Copyright 梅昆布茶 2012-07-14 03:39:01
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