雨上がりに開く傘のおはなし
るるりら

折り畳み傘の畳み方には コツがあって
器用ではないのに私は そこは 得意で
自慢するほどでもないことが一番素敵で

端麗に畳まれた造花の朝顔を傘だと指差した指が
私の人差し指をちいさな五本の指全部が包む素敵
自慢したことなんてないけれど指の感触残ってる

雨上がり 心を全部 開いて 山風の中を歩いて 
傾斜の葛の葉が 風にあおられて 全部同時に ひるがえって
白い

人々が傘を畳んで 私は上手に畳んででも自慢しない
朝顔が一斉に咲いて人の傘が畳まれたのと同時に朝顔は開いて
観照の境地に 人々は微笑む

寛容になれず譲れず泣かせ罵倒凝り固まる時間より
散歩の犬が呼ばれて尻尾を振る様子のほうが美しい
寛容な羊羹のように角は失わず ちゃんと甘い言葉
とてもやわらかなのにちゃんと直線を失わない幼児
自慢したことなんてないけどあの指の感触覚えてる

ひとさしゆびを 五本の指でつつまれたみたいな 
たからもの ほかにあるのか探してみる
綺麗すぎる言葉で町はあふれていて
欺瞞の言葉で町はあふれていて
つかれた人は さらに言葉を全部捨ててゆく
捨てた言葉の悲しみの裏に やさしいほんとうが畳まれていると いいな
パぁンと傘みたいに 開いてみせて
朝顔の花みたいに パンと 開いてみせて
自慢して いいよ


自由詩 雨上がりに開く傘のおはなし Copyright るるりら 2012-06-30 05:48:27
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