日常の詩
itukamitaniji
日常の詩
彼がそもそも歌いはじめた 理由はもう思い出せないけど
物心がついた頃から 歌うことはずっと近くにあった
そんな彼にある日 父親がギターを買ってきた
誕生日でもクリスマスでもない ただの普通の日のこと
自分の言葉で歌いたいと 思うようになった彼は
最初は軽い気持ちで 自分の言葉を綴るようになった
ある日父親が死んでしまって 彼の中で何かが弾けた
もっと深い言葉で たくさんの記憶を残さなきゃって
生まれた瞬間に 全てのものは終わりへと向かう
その間に出会えるものが 無意味にならぬように
同じように歌うことで 何かを伝えたいと思う
仲間たちに出会えた 彼はますます歌が好きになった
誰にも話さなかった 胸のずっと奥の夢の話
ここでは笑わず聞いてくれる そんな場所だった
大切な人ができた 自分のために歌ってきた彼は
自分じゃない誰かのために 歌う勇気を手に入れた
たくさん生まれる歌に 彼女も素敵と喜んでくれた
もっと優しい言葉で たくさんの思いを歌わなきゃって
けれども世界は残酷に 二人を裂くことになった
信じていたもの消えてしまって 彼は失望した
時は流れて 忙しなく動く世界に取り込まれて
仲間たちと離れ離れ 彼は夢の話をしなくなった
だけど変わらず歌は好きだった それだけが救いだった
だけどあの頃とは 何かが足りなくなった気がした
ふとした時に教わった 答えはずっとすぐそばにあった
難しいことではないのだ 今という日常を歌えば良い
足りる足りないではない ありふれるがしかしたったひとつ
自分にだけ与えられた 特別な日常のこと
辿りついた瞬間から 今は過去へと変わり続けてゆく
その流れの中で 一体どれくらいを覚えていられるだろう
生まれた瞬間から 全てのものは終わりへと向かう
その間に出会えるものが 無意味にならぬように
ずっと刻み続けてゆく
君が居たことの証明に
君と居たことの証明に
自由詩
日常の詩
Copyright
itukamitaniji
2012-06-14 16:52:08