歌姫の憂鬱
itukamitaniji

歌姫の憂鬱

目まぐるしい日々で 心の穴を塞いだけど
本当の意味で 満たされたことはなかった
たくさんの物を 天秤にかけて比べたけど
最初から 釣り合う物などないと知っていた

部屋の片隅の モンスターが問いかけてくる
お前の立ちたい舞台は 違うんじゃないか?って


お気に入りの ライヴTシャツに着替えて
彼女はせめて抵抗をする 変わることはないわって

暗がりの片隅から モンスターが追い掛けてくる
お前の居るべき場所は 違うだろう?って

10年に一人の逸材なんて ちやほやされていた彼女も
歌うことを 忘れたふりをして普通に生きていて
それで良いのさ それが幸せなのさって
遠くを見るような顔で 呟いて笑うのさ


ソファーの上に立ち上がって 目を閉じる
それは一瞬だけの歌姫 だけど目を開けると
カットがかかって終わる また日々に飲み込まれて


部屋の片隅から 問いかけてくるのは自分だった
お前の立ちたい舞台は 違うんじゃないか?って

今の自分は大好き だけど何かが足りないなって
何が足りないか 本当は知ってるくせに
夢見る頃は過ぎても もう一度歌ってよって
それは彼女の願いじゃなく 僕の願いだった


自由詩 歌姫の憂鬱 Copyright itukamitaniji 2012-05-31 01:45:07
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