あたらしいものたち
梅昆布茶

あたらしいものにはまだ名前がない
形もあまり決まっていないしそれはたぶん

人類が歴史のなかへ隠しておいたものを
あきらかにするようなようなかたちではみえててこないのだろう

冷蔵庫のドアに貼ってある付箋の文字のきみの固有名詞の響きが
普通名詞とならんで僕からはうすくて遠くてせつないように

それは熟練した鉱山技士が本命の鉱脈をひたかくしにするように
支脈のまましばらくたたずんではぼくたちのちょっとでこぼこな
ことばの整列の中へそっと寄り添ってくるものなのだ

あたらしいものがことばを求めるのかあるいは
ことばがなにかえたいのしれないものの輪郭を炙りだしてしまうのか
かつてわかっていたものではない
あるものが胎動を始めるのを感じとるのだろう

それは定形不定形にかかわらずある意志を持ってそこにある
気配なのだ

ほんとうは君の唇からもれだしてくるものは
僕たちが経験の連続性というかってな仮説で歪めてしまっている
あるたいせつなメッセージなのかもしれない

名前があたえられていないからといってそのものが
存在しないわけではない

僕たちの頭の隅っこに影のようにうずくまっているそれは
いつか言葉を得てゆくのだと思う

そしてそれが血肉化した日にはまたさらにあらたな
あたらしいものを要求してゆく
ことばやことばの示す世界の新陳代謝はこれからもつづくのだが果たして
それとともにぼくが変わってゆけるのだろうか?

このまま凝固してしまわないように
わかったものをわからないものへと変換する
強烈な無知でありたいものだ





自由詩 あたらしいものたち Copyright 梅昆布茶 2012-05-30 21:38:35
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