彼女
梅昆布茶

かろやかな韻を踏んで彼女はやって来る
きせつのすべてを引き連れて
草原や潅木の露をあつめたりミツバチたちと
あかしやのはちみつをつくるんだとか

神殿の壁はまだひんやりとして小さな蛇がやすんでいた
旅芸人は眠りから覚めあさげのしたくをはじめる

そのやさしげな髪はなだらかにうねり
ちいさな後悔を日の光でとかしてくれる
動物たちは水辺であさの喉をうるおし
よるの魔物は地の底でやすむ

そうこんな時間には
福音はだれのものでもない
やさしいことばだとおもえるんだね

きょうという日はぼくらのために
ささやかな驚きを用意してくれている
そんな予感に満ちあふれたたゆとう時間のなかに
ふんわりとうかんでてもいいんじゃないかな

まるで一日のはじまりに
やさしく髪をなでられているみたいに
なみなみと注がれたミルクを飲み干すように
ひかりで満たされるのさ

そうこんな彼女がまた
くりかえしやってくるなんて
すてきなことだよね

そうおもわないかい





自由詩 彼女 Copyright 梅昆布茶 2012-05-27 08:53:43
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