タニング レッド
salco

Tanning red

雲ひと筋ない昼下がり
日差しがもう頬を刺す
樹々は一段と深くなり
更地の砂埃の向こう
間延びたロングショットを打ち合う
2面だけのクレイコートの4人は肌が赤い
手前の広場では近所の子供が3人
古パター、ドライバーを手に手に
野球のボールを打ち合っている

と、
電柱の足元にハガキ大のチラシ
黒のゴシック体で
「あけぼの会」
パートナー紹介、出会いの場などと
名称と文面から察するに高齢者用らしい
 ふん、爺さん婆さんの「あけぼの」ね

しかしチワワの丈ほどの所に
こんな小さなチラシを貼って誰が見るのだ
目線位置ではすぐ剥がされてしまうのか
それとも犬に用足しさせる老人の視点に
合わせての事なのか

犬猫が無聊を慰めてくれようというのに
男女交際、夫婦関係の煩わしさをまだ繰り返したいのか
それでもじき死に行く身なればこそ
泣いて骨を拾い、2年でも3年でも仏壇を拝んでくれる
そんな相手が地球にひとり、遺した居間にひと時
いてくれたら消え甲斐もあるというわけなのか
かくも老残は生なまと侘しいか


自由詩 タニング レッド Copyright salco 2012-05-23 23:13:33
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