謎の真実
梅昆布茶

おもうんだけれど
すべての真実はきっとどこかの看板の裏にでも
ちいさな文字でこっそりと書いてあるんだ

ぼくの夢の中の沙漠の入り口で老人は言ったのさ
誤解は理解の種
迷妄の畑にも真実の苗は育つって

本当の時間が時計の文字盤ではないように
事実の集積が現実ではないのかも知れないな

僕達は個別的偶然的に不条理に愛するのさ
だって君の恋人ほどわがままで冷たい生き物は
動物園にだっていないぜ

でも世界はロマンのない劇場だなんて
早合点しないでくれるかな

いつになったら生活楽になるかなあなんて
せちがらいメールをぼくがしてるなんて思わないでくれ
それは彼女と僕の間の秘密だから
きみにだけは言っちゃうけどね

ロミオとジュリエットという酒場があるの
いつもそのロマンチックなネオンをみるのだけれど
想像するだけでじゅうぶん
なかに入ろうとは思わないし

もしシェークスピアがその後のジュリエットとか書いて
たら幻滅でしょう。 僕は嬉しいけど。

だけどさあ...もんぎりがたの文部省推薦の恋愛よりも
下世話な恋愛生活のほうが高度な技術が必要な気がするんだ

たぶん今必要なのは誤解を正解にしちゃうような
茶目っ気たっぷりないさぎよさじゃあないのかなあ
きみにはそれがあるようなきがするし

たとえば花嫁がぼくらにとって一瞬の華であるように
僕達は二次会のもぎりの半券をもって残りの人生をいきねばならない

そんなリアルな日常のなかから
あらたな恋愛哲学をあるいは
絶望の美学をまなばなければならないのかもしれないのだね

僕の個別的例外的な真実がきみの恋愛生活に応用できるとは思わないが
でも時々はきみが思うとくべつな真実もこっそりとおしえて欲しいんだ
それがきみの生きるスキルの核心だと睨んでいるんだ

隠さないで教えてくれよ一杯おごるから
だってきみの生態はぼくにとって謎だらけなのだもの

え...真実はいつも謎だって
そんなつれないこと言わないでさ...





自由詩 謎の真実 Copyright 梅昆布茶 2012-05-20 02:13:58
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