少年
itukamitaniji

少年

言葉知らずの純粋な少年は
足らない言葉を必死で探し続けてた
書いては破って捨ててノートのページは
減っては減ってはついに無くなってしまってた

ギターを背負った自転車少年は
まだ明けない街を必死で駆け抜けた
眠らず書き上げた最高傑作で
世界を変えるんだって

何処の誰の心にだって
きっと届くと信じている
広さも分からないまま舞台の真ん中に立って
いつまでも夜空に向かって歌ってた


いつでも少年気取りの大人の
夢は余計な悩みで太っちまった
もう似合わなくなった中二な言葉を
紡いでは紡いではついに尽きてしまった

老いを憂い歎いている大人の
感情は擦り減って痩せ細ってしまって
辺りを見渡しては同じような人達だよって
自分を納得させた

『何処へだって…』
『誰の心にだって…』
そんなことを本気で信じていたっけな
誰の悲しみさえ君の苦しみさえ
救える人間になれるんだって


ずっと望んでいた自分になれたのならば
それを語るだけで様になるのかもね
そんな風にはもうなれそうにもないや
こんな僕は何を歌えるのだろう

いつでも少年気取りの大人は
そうやってもう何度理由を取り繕っただろう
あの頃みたいに歌えないと歎いても
そんなもん当たり前だろ

『何処へだって…』
『誰の心にだって…』
そんな大それたことはもう言わないから
今の自分のことを取り巻くモノくらいは
せめて大切にしてみたいって思うよ

そんな大それたことはもう言わなくて良いから
今の君のことを取り巻くモノくらいは
せめて大切にしてみてよって歌うよ


自由詩 少年 Copyright itukamitaniji 2012-05-17 01:13:35
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