そらの珊瑚

野の花が
あんなにも
優しげに微笑むのは
きっと
手向けの花であるから

肉体を持たぬ人に
花以上に似合うものが
あるでしょうか

空腹も感じないので
食べ物はいらない
物欲もないので
金などなんの価値もない
幸福になりたい
希望を叶えたい
生きている限り
つきまとう
一切の執着から解き放たれて
五月の風のように
自由なのでしょう

ヒトがまだ
洞窟で暮らしていた頃
死んだ者の
傍らに
花を供えたという

供えたヒトは
きっと知っていたのだろう
自分もいつか
朽ちていき
大地に還ってゆくことを

野の花を見ると
切なくなるのは
生きて死んでいくことだけは
平等であると
静かに
美しく
謳っているから

野の花は懐かしい匂いがする

もう逢えないあの人が
常世で
同じ匂いを嗅いで
現世うつしよのことを思い出している気がして
胸いっぱいに
その匂いを吸い込んでみる
そして
今を生きていることだけを
愛してみようと思う


自由詩Copyright そらの珊瑚 2012-05-11 10:15:41縦
notebook Home 戻る