葉陰のひと
恋月 ぴの

もうちょっとを掬い集めても
もうちょっとはもうちょっとのまま

それでも息なんかふぅっと吹き付けたら
袖口でゴシゴシ磨いてみたけど

やっぱし、もうちょっとはもうちょっとのままだった




あの頃のわたしってね
吃音混じりな恥かしがり屋さんで

いつも好きなひとの顔色を伺うばかりで

告白できないもどかしさに俯いて歩いていたのに
ちいさな石ころにけ躓いては笑われた




もうちょっとはもうちょっとのまま

それはそれで良いのだと思うけど
思いのたけを伝えられたら、さぞすっきりするんだろうね

果して、どっちが自分らしいのだろう

なんて言い訳に思えてしまうけど




今だってたいして変わらないのかも

もうちょっとにしがみついていたりして
あの頃のわたしと一緒だね

いつまでも告白できず俯いて歩いているなんてと
丸まった自分の背中を押してみた




自由詩 葉陰のひと Copyright 恋月 ぴの 2012-05-07 19:01:19縦
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