悲恋
ただのみきや

北国に桜が咲いて幾日も経たず
昨日突風が吹いて花びらを散らして行った

今朝 桜は冷たい雨に濡れそぼち
うつむき滴る 運命を受け入れつつも

儚げな美しさを愛でる者が
その色香に誘われて手を伸ばす

花は看取る者へ最後まで微笑み続け
冷たく濡れたその身を委ねる

いつになく寡黙な鳥たちが
雨の囁きに聞き入っている

目を瞑ると波紋のような静けさが広がり
微かに 吐息が聞こえたような

突然 引き裂くように鳥が鳴き
何かがこと切れたことを告げた

散ることもなく冷たくなった花は
涙のような雫を滴らせた

艶やかな姿のままであることが
いっそう悲しかった



自由詩 悲恋 Copyright ただのみきや 2012-05-04 23:57:47
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