第一球
たもつ

 
 
二死満塁のピンチだった
ぼくが第一球を投げると
キャッチャーは既に不在だった
家を継ぐために
故郷に帰ったのだ

走者はホームに生還した
その間にバッターは
甲状腺の病気が悪化して
引退していた
みなそれぞれの事情で
いつしかゲームを去った

今、ぼくは一人で
トンボをかけている
もちろん残ったのも
自分の事情に違いなかった

マウンドにのぼって
何回目かの第一球を投げる
山なりのボールがバウンドして
ホームに届く
グラブもすっかり年をとった
 
 


自由詩 第一球 Copyright たもつ 2012-05-03 18:55:59縦
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