言葉の旅人
梅昆布茶

ぼくたちはことばの国のたびびと
遥かな源流から
ひとひらの花びらが流れてきてそれは
あらたななまえを与えられて言葉となる

ぼくたちは森を抜け荒れ野を辿り
大地から漏れ出た溶岩流に閉じ込められた時間を
自分のもののように味わいながら
雲の流れを言葉とする

時にはたわわに揺れる果実の
その重さと和毛に手のひらをくすぐられて
歩みを止め感嘆するその想いに
言葉を探す

夜空に散りばめられた世界の断章を
粉々に砕けた古代の骨片を
つなぎ合わせて歴史の道程を
言葉で満たしてゆく

そしていずれは生命の粒子とこころの成分を
無機の大海のなかから還元し抽出する
いのちの錬金術師になりたいのかもしれない

活字をひろうように言葉を組み上げてゆく
それはジグソーのピースのように
世界と人生の片隅を意味で埋めてゆく
そんな毎日もまたいいものだとか思いながらも
やっぱり不器用に積み重ねたレンガを崩しながら
つくづくあきれながら惑いながら積み直しながら
いつのまにか歳をかさねてゆくのだね

そして
たびはまだ続く
たぶんいのちのある限り
永劫の尻尾を掴まえるまでは
言葉のひかりに触れるまでは
言葉が燃え尽きるまでは
あなたと
言葉を交わせるまでは
いつまでも







自由詩 言葉の旅人 Copyright 梅昆布茶 2012-05-03 18:19:52
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