とかく嫌いな人のことはあまり知らないものだ
ただのみきや

春の公園に満面の笑みが咲く
お花模様のワンピースでタンタカタンタカ
お砂場までもタンタカ行進だ
お日さまが照らす世界はこんなにも広い
驚くことはあっても怖いものなど何もない
ほらほら お友だちがやって来たよ

毛むくじゃらのマルハナバチは
今日も蜜集めに大忙しだ
まだまだ花は少ないからね
花の色を捜して飛び回り
見つけたら触覚で触って確かめる
これは凄いぞ お花畑がこっちへやって来る

不思議な出会いにきゃっきゃっと笑う
娘へにっこり顔を上げ
ママは携帯を落しかけた
「大きな蜂が娘を襲っている! 」
怖い顔でバッグを振り回し蜂を追い払う
大きな声に驚いて娘は引き攣るほどだ

娘は何だか分らぬままに
怖くて悲しくて泣き出した
小さな心に刻まれた
二度とぶんぶんには近づかない
きっと怖くて悪いものだ
ママをあんなに怒らせるんだもの

こんな出会いを繰り返し
子どもは大人になって行く
たくさんの恐れと嫌いを心に縫い付け
入れていることすらも気づかないカラーコンタクト
真っ白な出会いに誰かのすり込みの筆が入り
最初の思い込みが積み重ねられて強固な石垣となる


自由詩 とかく嫌いな人のことはあまり知らないものだ Copyright ただのみきや 2012-04-29 00:52:29
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