旅立ち
梅昆布茶

長いスロ-プを滑り落ちてくる記憶の思いがけなさに
ふと足をとめて目の前をよぎる影を追えば
短くなった日時計は正午でとまったままうたたねをして
またあの回廊へといざなってゆこうとする

この場所できみの影を見つめ心の痛みを知り
大理石の柱に密かな罪のしるしを刻んだのだが
いま再びぼくたちは手足のないトルソ−の眼差しで
夏草のいきれを共有しているのだねここでいませつなげに

この回廊は無限に遠く彼方に連れ去ってゆく風
何も確かには存在しないし夢の破片さえも
砂に埋もれてゆく哀しみのよう

導かれるままに石畳を踏み冷たげに湧き出る泉のほとり
しばし足を浸せばまたあらたな旅立ちの予感

この場所できみのことばの響き心にとどめて
歩き始めるよこの世界をたった一人で
優しい孤独とともに雲を浮かべた空の下を
微笑みながらも






自由詩 旅立ち Copyright 梅昆布茶 2012-04-22 13:53:02
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