口ずさむひと
恋月 ぴの

四月病ってあるらしい
さりとて年度替りの初々しい賑わいとは
とうに縁遠くなっているのだから

花散らしの雨もあがり葉桜と化した桜並木を
これでよいのだと独りごちながら歩む




しっくりしなかったのに
いつの間にやら馴染んでいる

私たちの時代とは異なって
厚塗りのお化け顔とか見かけないけど

こころの内はまっさらなままでいて欲しいと願う




お花見はと見上げてしまいがちだけど
足元にも春は訪れてくれていて

名も知らぬ可憐な花々が陽だまりを春色に飾り

その他大勢じゃ、失礼だよね

春になる度に野草の名前ぐらい覚えなくちゃと思いつつ




四月病ってあるらしい
さりとて他の誰かになれるものでも無く
仕舞い損ねたコートの重さに驚き

見かけ倒しな振る舞いなど私には似合わないのだからと

通いなれた道すがら、懐かしい恋の歌など口ずさむ




自由詩 口ずさむひと Copyright 恋月 ぴの 2012-04-16 19:01:04縦
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