アクセルに心酔
三奈


アクセルを踏んでスピードをあげる
普段は開けない車の窓を開けると
夕凪の匂いがふわりと香った

あぁ、なんて心地よい

名前は過去に置いてきた
積み上げてきたものは全部
トランクの中で眠らせておこう

考えすぎの脳みそも
シャットダウンしておやすみなさい

名無しになったこの身体
叫びだしたくて疼いている

私は私でなくなった
誰も知らない私になった

だから、全部知らんぷり
時間も
鳴り続ける携帯も
手を振ってくれた対向車も
全部全部 知らんぷり

まだ戻らない 戻りたくない
現実が恋しくなるまで

今はただ
加速する心に酔いしれていたいよ






自由詩 アクセルに心酔 Copyright 三奈 2012-04-15 01:54:04
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