鉄道自殺
シホ.N


きのうの夕暮れ
この町の小さな駅の
ラッシュ・アワア時
飛び込みがあった、若い人の

その事
脳裡よぎりもしないまま
線路したの
花咲く春の道を
今日の真昼
走り抜けていたわけで

いまは夜のイメエジが走る
見えない音が走って去って
すでに血もかわいた
赤茶けた線路の上を
車輪が影をからませ疾走して

死のごとき影はからんで疾走する
つめたく鉄の
あついレエル
やがて白日が影を洗う、日常のために

缶詰状のこの部屋にも届く
とおい列車の音
見えない金属質の疾走者
夜の空気つらぬき
いま真夜中の脳裡をもつらぬき痛める


自由詩 鉄道自殺 Copyright シホ.N 2012-04-15 00:00:15縦
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