憑依
salco

丑二ツ
闇底の寝屋
戸板の合わせ目の
線なす月影に蒼く透け
枕辺にうずくまるおんな
痩せさらばえ
ざんばらと髷ほどけ
何処から入り来たやら
長い鉤爪震わせて
寝入る頭骨に額つけ
中の夢見を食っている
寂寥の景色の委細
満ち足りた赤子の安気
そよめく抒情を音もなく
ねりねり齧る
もぐら眼亡者

 持たざる者の哀しい憧れを
 きっと許しておくれだろうね
 わしとて夢を視たいのよ
 取るにも足らぬ卑しい業よと
 看過ごしておくれだろうね
 儂とてありてみたいのよ

夢見の地所を盗み食う
それで胸の洞を充たし
剽窃泪に酔うと云う


自由詩 憑依 Copyright salco 2012-04-10 22:07:01
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