川をわたる
はるな

尼崎を超える頃に日付は変わる
川をわたる鳥のむれも
一日分の年を取る

吊り革に群がる背広を押しのけて
酸素のうすい車輛で
どうにか息をしている

神様
今日が正しくなくても
息をしている

雑踏を乗り越え
小さなライブハウスから声が届く
かすかな

踊れずにたちつくして
帰りたかった

ただ
帰りたかった

ネオンを食べ尽くして
恋愛にも飽き飽きして
届く声に
疲弊してしまって
帰りたかった
神様
それでも
川をわたる

川をわたる
川をわたる
川をわたる

一日ぶんの年を取り
尼崎を
こえる頃


自由詩 川をわたる Copyright はるな 2012-03-28 21:47:48
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