三月のライオン
kawa

父は絵本で、母は旅人だった。
ダンジョンを地下へ地下へと解き進み
衰弱しきって手に入れたのは
たったそれだけの事実だった。


うつくしい物語を記録する誠実な本
わたしは文字を指で読んだ。
そうして口から電撃を飛び散らせ
青空を呼んだのは
ただ君に好かれたかったからだった


重力のみでよりそう月
さみしいものに感じながら
わたしと君にはそれすらほとんど働いていない
なあ、こんなにつよく求めるのは、偶然だ。
たとえどんなにつよく手をとり合っても
わたしたちがつながっているのは偶然だ。


たまに帰ってこれたのは
いつも雪の降る春の日だった。
たくさんのたくさんの雪片
それと道端で土を生んでる三月のライオン。


自由詩 三月のライオン Copyright kawa 2012-03-24 23:46:47
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