炭水化物の夜
salco

近頃だせーダッフルコートを
ファミレスで脱いだ娘は今どき見上げたショートボブ
カラーリングもメイクも知らない
つぶらな瞳を見開いたまま
発育を15で停めた18歳のレジスタンスは北風の中
孤立無援にスピンする
制空権は行くトシ来るトシ、街は行くヒト帰るヒト道交法
ここは本郷
自分以外は楽しさ轟々ゴーゴーの夜


東武東上線と埼京線とメトロを乗り継ぎ
ダサイタマのプレーリーから会いに来た黒い白髪の母さんは
アキ美容室のロットによく合うファッションが当然スガモな教育一途
気軽なタッチの過干渉にエゴのマグマを覗かせて
話の接ぎ穂に困りはしない
それでも説教と栄養学は控える生活習慣
琴線の傷んだ娘がわめき出すから
ここはサイゼリア
ぶちまけ多孔質パスタの夜


国連担保理タンポン決議に基き
内政の混乱に乗じて国交を辞さぬ枢軸
そんな敵国が撃ち込んで来る高射砲を避けるため
近視もないのに平行移動の犬喰いをする
版木に向かう棟方志功の傾きで一意専心ドリアにタラコソースシシリー風
湯気だけステキなコーンのスープ
文科?類狙いにつまずいて嗚呼、犬喰い娘は楽しゅうない
トレンドと恋に尻振るだけのIQもなく
ここは本郷
お先まっくら水田地帯


犬の娘は犬の娘は
澱みなくぺらぺらお喋る母さんの澱みがキライ
人生を習慣に生活を習性にドリンクバーをお得と概念
疑似餌に釣られてお財布のアルミ貨と生涯向き合うマシーンがキライ
「ママはホットでシュガーじゃなくてガムシロね」と念を押す
ホワイト家族のファミリー割引につながれて
孫さんでもスカッドミサイルでもない自分がキライ
子宮で見たのは甘い夢、白亜紀パンダ期思春期後期
初潮と同時に始まったと余命宣告された人生と
人生の意味とやらが大キライ
フツーじゃないのに平凡な自分が誰より何より大キライ
嗚呼炭水化物
暗夜行路の犬喰い娘


自由詩 炭水化物の夜 Copyright salco 2012-03-23 00:58:15
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