1983
梅昆布茶

空は突き抜ける様に青かったし俺のバイクは相変わらず
走り出すまではやけに重かった
時々はビニールレザーのシートの上に安っぽい天使が
休んで煙草をふかしていたりするのだけれど
それでも自由を愛を平和をのんきに夢見ていた

彼女は愛らしくてでもめっぼう気も強かった
もちろんたまにはわがままも言ったけれど
ボディブローのように後から効いて来る女だった

桜の並木道は空を薄紅に染めて俺たちもそんな夕暮れにしばし
足を停めて二人桜色に染まる小指繋ぎながら
幾つもの別れの言葉噛み殺しながら
そんな横顔焼き付けるように
ためらいながら望みながら心彷徨わせたまま

言葉の替わりに音楽があってビートの合間に伴奏のように意味の無い
挨拶を交わすぼくたちには北極圏の白夜のように
一晩中明るいままの休憩なしのライブショウさ

聖子ちゃんのハイトーンの歌声が流れる街に赤いスイートピーをさがして
粗悪なウィスキーで身体を傷めながら路地裏で吐いていた
1983

僕は相変わらず生きている
壊れかけたアンプでささやかな想いや切なさを増幅させる
人型アンドロイドタイプ3
分類パターンHG-55
特性
抒情過多情緒不安定
汎用自働修復回路に多少のバグあり

どう生きてみたところでファジーなんです人間て
世界がわがままに見えるのはきっと自分がわがままなのですね
真の自由は得るものではなく なるもの なのです

ブッシュマンが服を着ないのは彼らの正しい生き方なのでしょう










自由詩 1983 Copyright 梅昆布茶 2012-03-22 20:09:51
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