ユートピア
塔野夏子

愛し合うことで
この世界を美しくけがそう
互いの内なる罪の昏さに
惹かれ合った二人だから

二人がいろいろなかたちで
抱き合うそのたびごとに
幾重にも罪は深く響き合う
二人の身体から闇が溢れ
あやしい花のかたちに広がってゆく
二人を覆う空も爛れ
日も月も星も
毒を帯びた光を放ちだす

識っている
罪ある二人は
めぐり逢い愛し合うことで
さらに罪を重ねていると
そしてその罪は
それ自体がすでに罰なのだと

けれどももはや逃れようもないのだ
残酷に愛し合いつづけ
この世界を美しく汚しつづけよう
あやしい花のかたちに広がる闇の
中心の聖域へ
いつまでも落下しつづけよう

他の誰も知らないおののきの鎖に
二人して輝かしく繋がれたまま





自由詩 ユートピア Copyright 塔野夏子 2012-03-19 19:52:56
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