武道女子
木原東子

自ら意図してじゃないの
前世の因果かしら
武道に縁があるようなのよね

父から剣道の手ほどき
刃を垂直に落として
むぎゅっとばかり、つかを絞る
小指の力が肝心でね

弓を引いた年月もあったっけ
左の親指でむぎゅっとばかり、弓をねじる
的は弓の中に半分重なる
両目で見てるからね

あとは胸を割り入れる気持
矢は自然に弦から離れる
的に当たる音の軽やかさ
残心も大切よね(ヤッターなんて言わない)

もう少しで合気道一家になりそうだったけど
宙を跳んで転がるが、どうもね
ちょっと弱虫だった

ふと太極拳を始めたのね
するすると、能の舞いよろしく
人間の体の重心を臍の下で
コントロールするのよ、左右に移すだけ

緩やかな動きの意味を知りたくなって
対面でする推手(すいしゅ)にまでいっちゃったわよ
相手の拳のエネルギーの方向を
ずらせばバランスが崩れるでしょ

そこが極意なんだけど
あなどれないんだな、これが
中国五千年の積み重ね
楽には覚えられない

チータが長い尾を振って急カーブするのも
力学によるように
ひとの体にだって力学で説明できる
楽しいやりとりがある

それを使って達人ともなると
とんでもない仕事をしてくれる
そこまで体感してみたいよね
真理の所以を


自由詩 武道女子 Copyright 木原東子 2012-03-18 22:56:56
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