人魚
itukamitaniji

人魚

海の底にいるみたい ならば私が見上げている光は
ただ海面に映った ニセモノの月の光なんだろうか
靴をなくした踊り子 気付いたら私は裸足で
真っ暗なステージに 浮かぶように立っていた

たくさんの目が こっちを見ているのが分かる
とても怖くて 自分と別人の間をさまよった

彼女の小さな体には 大き過ぎた心が
悲鳴を上げている そしてもがくように
歌になって溢れ出した


海の底にいるみたい だけど私を照らしている光は
ただ空に浮かんでいる ホンモノの月の光だった
ひれをなくした人魚 誰かに引き剥がされてしまって
汚れてゆく海に向かって 何度も何度も歌っていた


スポットライトに照らされて 眩しくて目がくらんだ
だけど大丈夫 私は私だと分かったから

彼女の小さな体には 大き過ぎた心が
悲鳴を上げている そしてもがくように
何度も魂を削って 彼女が伝えたいこと
まるで泣いているように そして叫ぶように
歌になって溢れ出した


自由詩 人魚 Copyright itukamitaniji 2012-03-15 12:23:31
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