春近く
オイタル

冬の終わりです
雪です

女を埋もらせています
深さ九十センチ
春ともなると
シャベルがやってきて
雪を掻いたり
女を掻いたり
シャベルも
女も
シャベルも
女も

みんな 消えてゆきます
夜の端に置かれたオレンジの
おしりに影を付けて
なめらかな雪の斜面に
一つ二つを滑らせて
競って夢の奥へと
下ってゆくものたちです

猫が滑っていきます
犬も
弦の切れたギター
凍って空を指す洗濯物の袖
並んで震える
ザクロの赤い口
それから
九十センチ
雪に埋もれた女


郵便局の少年が
あいさつもなしにはがきの束を
置いていきます
さよなら
さよなら

そして もう
春近く


自由詩 春近く Copyright オイタル 2012-03-11 21:05:49縦
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