アメーバ
itukamitaniji

アメーバ

君は今雫になって 真っ白な画用紙の海に
飛び込んでゆく 真っ黒な一滴のインク
産声を上げることなく 静かに染み込んでいって
誰も知らない形になる 今はまだ途中だけど

そもそも途中は いつになれば終わるのだろう 
いつ完成形になるのだろう 君は知らされぬまま
触手みたいに その手足を伸ばし続けてる
グロテスクな姿のまま まるでアメーバのように

世界を汚す 君は生きているだけで
世界を汚す 君は存在しているだけで


そして今じゃもう 何色ものインクの雨が
画用紙に降り注いで 元の色も分からないほど
世界はぐちゃぐちゃ 穏やかだった海に波が立って
君はもう跡形もなく 飲み込まれてしまった

想像してみる 画用紙の上に完成した絵を
そもそも完成したとは 君は知らされぬまま
街にも思えるし あるいは肖像画かもしれない
だけどそれは決して 見ることはできないまま

世界の一部だ 君は生きているだけで
世界の一部だ 君は存在しているだけで


自由詩 アメーバ Copyright itukamitaniji 2012-03-09 01:20:33
notebook Home 戻る  過去 未来