Crosswind/Crossroad(契りのひと)
恋月 ぴの

風の吹き抜ける交差点で
あなたは待つ

約束は必ず果たされると信じて

ひたすら待つ
待ち続ける

そして見上げれば雲

春の雲

おぼろげで奥ゆかしくありながら
したたかさをも予感させて




生きるもの
いずれは死に至るように

≪約束は果たされる≫

だとするならば
地の果てに投げ捨てた一枚の銀貨
あれは
ふたりで過ごした日々の記憶

軋む鎖骨の痛みに逆らい伸ばした上腕に感じたあなたのぬくもり




あなたは見やる
時の鼓動

果たされる約束の放つほのかな輝き

そして、あなたは気付く
或いは

とうに気付いていた

愛憎で築き上げた螺旋形のいただきでは

阿鼻

叫喚にも似た

暗闇と

黒羊たちの悲嘆にくれた眼差し




ひとは孤独

それ故に立ち止まり
佇み

果たされる約束のみぎわで
委ねる

自らのいのち

そして吹き抜ける一陣の春風に乗り
かつて愛したひとの面影をたどる




自由詩 Crosswind/Crossroad(契りのひと) Copyright 恋月 ぴの 2012-03-05 19:02:04縦
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