時間ドミノ
ただのみきや

あと 一つ
それで完成

そう思った瞬間

倒してしまった!

しゃっくりみたいな声を一つ漏らして
あとは動けない からだがこわばって
ドミノは時間を遡り
駿馬のように駈け上る

二股に分かれ また一つになり
山を登って また降りて
ドミノは心地よく軽快なビートを刻み続ける
一つのドミノは 一時間か 一日か
ああ 先が見えなくて不安だったあの頃も
結果から見て行くのなら何てことはない
 当たり前につじつまが合う

懐かしさに目をそらせない
ああ 新婚の頃はそうだった
そう なんの迷いもなく友達とはしゃいでいた時代
高校 中学 そういえばそんなこともあった
あの運動会の日 忘れもしない
母さんの青い服 なつかしいな
 ああっ そうだ
  思いだした


余韻もなく
最後の一つが倒れた途端
ひんやりした沈黙が支配し
すっかり冷めた軌跡を鳥瞰図にした

倒れた最後のドミノ いや
人生の始まりのドミノに目を凝らす
そこには既に いや 
まだ わたしは居ない
 
 わたしが 居ない?

  それじゃあ いま見ている


















自由詩 時間ドミノ Copyright ただのみきや 2012-03-04 00:02:20
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