時の遠近法
梅昆布茶
むかいに洋館のある静かな広いとおりに面した
千原さんという掛け軸と刀のある名家の末裔らしいこじんまりした家の裏手の
片隅に石炭スト−ブのある一間に母とあねと僕は父の仕送りで暮らしていた
みぎへドンドンいくと函館湾沿いの自衛隊の駐屯地
ひだりへどんどんいくと路面電車のレールを踏んで五稜郭にいたる閑静なとおりには
ぼくの母の実家や僕の柏の小学校や孤児院もあってそこから出てくる白い服を着た孤児たち
友達もなんにんかいた
それを見守るポプラ並木や青年刑務所や母や叔母の通った広大な遺愛女学校の敷地があった
ぼくは自分が貧しい子だと知っていた
でもポケットの中には10円玉をひとつもっていた
駄菓子屋に走る
そこはパラダイス
いろとりどりの小さな輝く魅惑的な星ぼしがちりばめられた
おばさんが店番するそばを市電がとおりすぎてゆく
窓から手をふっていたのはだれだったかしら
時をさかのぼって風景をさがす心はかぜをはらんでなにをまわすのでしょうか
ぼくのあのときのちいさな小路をまがった先には
詩の子鬼があの青空をゆびさして
嗤っているのでしょうか
自由詩
時の遠近法
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梅昆布茶
2012-03-02 22:14:50