一個の孤独
ただのみきや

山砂はもうない
海砂ばかりが浚われ
洗われ
遠く運ばれ
混ぜられる
ごくありふれた砂粒に時折混ざる
貝の欠片の白い顔
ガラスの名残の澄んだ瞳
際立つ別嬪な粒子たち
僅かに
微かに だが
確かに
そこに在った

突然門が開き
数十トンの砂は滝のように流れ下り
陰鬱なセメントとの強制結合
型枠の中に吐き出され
鉄筋の骨格を覆う硬い体へと変貌する
一つの塊
一つの人工物
個々を分かつものは何もなく
あの潮騒の感覚
海の記憶すら
もはやない

誰もが群衆という砂塵の一粒
 巨大な
一個の孤独


自由詩 一個の孤独 Copyright ただのみきや 2012-02-26 20:30:33
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