もしも なれるものなら
ただのみきや

わたしはロボットになりたい
身も心も疲れ果てたとき
気力を失い起き上がることすら儘ならぬときでも
いつもと同じリズムとトーンで
自分の務めを果たせるように

わたしはロボットになりたい
笑顔が求められるとき
笑顔を与えることができるように
やさしい言葉が必要なとき
やさしい言葉をかけられるように

あなたが笑顔を求めるとき
わたしは笑顔をあげられない
あなたがやさしさを求めるとき
わたしはやさしさをあげられない

そうするべきだと思ってはいても
この心には 苦い血が流れ
壊疽した黒い 血が疼いていて

ああこの血を全て抜き取って
人工的で 入れ換え可能な
冷たい船や工場の体液みたいなものと交換して

プログラムされた笑顔でも
同じアクセントの言葉でも
かまいはしない
感情に左右されない電気信号に従って

わたしはロボットになりたい
この心の呻き軋みを修理して
あなたがしあわせに暮らせるように
あちこちガタがきても動き続けて
最後まで微笑み続けて
完全に壊れるまでは何とかかんとか
機能する

もしも なれるものなら
わたしはロボットになりたい


自由詩 もしも なれるものなら Copyright ただのみきや 2012-01-31 23:17:19
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