雲と坂道のデッサン
石川敬大




  非定型な雲は生硬な定型でしかない
  ぼくを尻目にとりとめがない

  ぼくのO市
  かのじょのN市
  どちらも雲と坂が多い街であるから水っぽい
  川が
  なにかにむかって傾斜している


  坂道の両端は
  水っぽい空と海である


  アクセサリー
  付属品
  展望台と港湾施設と船はそのようにある
  きょうも概ね大過なく
  ただ一度きりの雲がながれて
  ぼくは
  どうしようもなく水っぽい
  抒情的な存在であることをやめることができない

  ぐらりとぼくが傾くと
  傾いた端からぼくを捉えにくるものがある
  それが
  定型の特徴だ
  とりとめのない雲がそう告げる

  坂道の尖端は
  たぶんひややかな海峡
  反対側は
  どこまでいっても水っぽいあお空


  稚拙な坂道で
  ぼくは
  とりとめのない雲をおもう






自由詩 雲と坂道のデッサン Copyright 石川敬大 2012-01-27 18:16:09縦
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