グリーンカレー
虹村 凌

誰一人バスケなんかしてねぇバスケットストリートとか言う街を
太極旗と星条旗に汚れた日の丸を煙草の煙りで燻しながら歩く
昔やったゲームみたいなロボットが歩く世界がどれくらい子供達に夢を与えて
自分が信じた世界が実は全く違った事がどれだけ俺を無気力にさせて
って責任転嫁したって仕方無いんだけどさ
「シカタネェヨ」って今日もまた空き缶に煙草を突っ込んで薄く笑う

例えば仕事してる時とかセックスしてる時とかに知ってる誰かが死ぬかも知れない
殺されちゃったり自分で死んじゃったりするかも知れない
そんな事を毎秒考えながら生きていく事は出来ないんだけど
時々はそうやって考えたりしながら
やっぱり俺が助かる事を考えている
俺だけが助かったって仕方無いんだけどね
誰も死んだりしない様になんて都合が良い事は叶えられないし
結局は俺が先に死ぬか否かってだけで
「ドウシヨウモネェヨ」って今日もまた煙草の空き箱を握り潰して薄く笑う

第二次世界大戦はまだ終わっちゃいないとか真顔で言って引かれて
去年の流行語はシーベルトとベクレルだって言って引かれて
「誰がマトモか」なんて言う雑談にどうにか滑り込んでやり過ごす日々を
戦争に負けるってこういう事なのかとか思いながら
俺と似た様な無気力な人間達と背中を丸めて電車に転がり込む
ヒトトシテどうなんだろうこういう毎日
24時間4交替シフトで働いてるから出退勤がバラバラの時間で
早朝とか深夜にコーヒーのシミがついた薄汚れたラバーソールで歩く俺を
昼間が正義だと勘違いして止まない世間の目が遠慮なく舐めて行く
誰が茶の間にホットなニュースをお届けしてるんだか知る訳も無いだろう
民放をタダで見てると勘違いしてたりしてるんだろうし
日本放送協会の受信料が意味わかんないとか言ってるんだろう
1つ何かを挟んだりハイパーギリギリモザイクをかけただけで誤摩化されて
納得しちゃう感じで生きていけるなら世界は実に単純で簡単で
インスタントでジャンクで魅力的なんだけどそうじゃないじゃん
とか真顔で言って「面倒くせぇ」とか「理屈っぽい」とか言われるカンジ
「アー、ソーッスカー」とか良いながらハナクソほじって薄く笑う

「みんなが何言ってるかわかりません」って言ってる俺が言ってる事って
つまりまぁ世間と違う言語なんだろうって事はみんなも俺が言ってる事が
別にまぁそんな事はどうでもいいか
自分の中にすんげー空洞があるとかそう言うんじゃないんだけど
自分が自分をよくわかってねーんでどうしようもねぇ
死ぬタイミング考えてみたりする訳なんだけど別に死にたい訳じゃない
経験的に死んでみたいけど
とか言いながらグリーンカレー作ったりしてる


自由詩 グリーンカレー Copyright 虹村 凌 2012-01-24 21:22:20
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