Above the sky(流転のひと)
恋月 ぴの

愛しているよとささやいて
私の心
を盗むあなた

断りも無しにと腹立たしさを覚えたとしても
ある意味期待していたのは確かことで

四十六時中、あなたのことだけを考えていた自分に気付く

はだけたシルク混のブラウスから覗いた
品の無い艶かしさは誘う色合いと
物欲しげな汚らわしさに満ち

いい年した女の言い訳は
深く刻まれた目じりの皺ほどに救われることも無く




それは私であって

鏡に映った姿を忌避しつつも
ありのままから目を背けることは許されえず

いつの頃からか
半ば諦めつつも仄かな期待を胸に抱き

我がままさは生きる力の源泉と開き直ってもみる




永遠とも思える日々
許されることの叶わぬ一人の男を愛して過ごす

その結末が生き地獄であったとしても
濃厚な
虚構に貫いた小さな部屋で

貪りあう
互いの総てを受け入れて




愛しているよとささやかれ
おあずけを解かれたメス犬になってみる

それでも季節は相変わらず
同じ場所で足踏みをくりかえしているようにも思え

いつか訪れるであろう人生の終末でさえも
ほんの気まぐれだったのかと

惑わせつつ

飄々と降り乱れる雪景色に天を仰ぐ






自由詩 Above the sky(流転のひと) Copyright 恋月 ぴの 2012-01-23 18:11:24縦
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