浅き眠りに見る夢
ただのみきや

寒さが緩むと
凍りついていた月光が溶け出して
暗い穴の中にも
虫たちの道を通って

滴り

滴って

ヒグマは

浅い眠りの中で
霞がかった
春の野山を

夢に見る

新芽が萌ゆる
水が走る
土のにおい

すでに遠い
記憶の果て

大きな背中を追って
森を行く

楽しげな
うぐいすの声


飢えて
痩せこけた

ヒグマは

胎児のように
まるくなって

夢を見る

飢えることのなかった
豊穣の年
母に寄り添った
短い季節に

遊んでいる





自由詩 浅き眠りに見る夢 Copyright ただのみきや 2012-01-22 20:40:53
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