いっそのこと
君が死んでしまえばよかった
血生臭い、たくさんのやり取りの果てで
私が
産み落とそうとしたのは
いつか君に
捨て置かれた、壁際の
ひび割れにも似た
床に散らばった、ドライフラワーを
踏み荒らして
窓に虹が架かるよ、と
投降を
差し迫る君の声は、紛うことなき凶器で
弾け飛んだ
第一ボタンの行方を知るより
もっと
早く、唐突に
私は
背中を押された、その腕に
爪を立てて
いつの日か
死んでしまった
言葉にすらなれなかった、私たちの
産声を
集めた君が
今
ここで
括ろうとした首
ひたすらに朽ちようとする
この部屋を這い出して
伝えようとした、細い腕に伸びる
傷
酷く優しい、だなんて
言うなよ、だなんて
なあ
擬音ばかりを口に運ぶようになった
あの日
君を
殺してしまいたかった
いっそのこと
君が死んでしまえばよかった
室外機の低く唸るような子守唄に
頭を打ちつけながら
玄関を叩く
何もかもより、君を選んで
私の
湿りきった
たくさんの、幸せな未来を描いた、言葉で
君を
溺れさせてしまえば
唇を噛み合った
君の背景が、途端にふやけていって
遠くで
澄み切った鐘が鳴る
窓の外に架かる虹を指して
君は
何度も、繰り返し、
投降を叫んでいる