美しいものは流転する
ただのみきや

まだ
誰一人として
踏みしめてはいない
ふわりとした新雪のままの
土手に重なって 遥か遠く
超然とした白雲が広がり
それを 微かに淡い
冬の空がつつんでいる

こがね色の午後の日差しは
白い凹凸に
斜めの青い陰をそえる
黒々と 毛細血管のように
緻密に書き込まれた
一本の樹木の根本にも
長く 絵筆で引いたように

風も
音もなく
時すら足取りをゆるめ
ただ遠く雲塊だけが
万物流転の穏やかな証人

今 ここにある
車の窓のフレームに切り取られた
刻 一刻と 燃え落ちて逝く
一枚の絵の美しさを
あなたに伝え切れない
ことばの絵筆の拙さ
もったいなくて
くやしくて


自由詩 美しいものは流転する Copyright ただのみきや 2012-01-19 23:29:00
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